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2006年11月05日

第五回「長門有希の100冊は図書館で揃うか?」調査

# 過去の回は以下。

予告通り連休ぎりぎりで更新。第五回です。
今回のテーマは「蔵書冊数の少ない県立図書館」

以前にfuzzyさんが県主要図書館の長門本所蔵率の推定を出していました。

市内の図書館の蔵書: 15~30%程度
県の主要図書館の蔵書の合計: 35~70%程度
国立国会図書館の蔵書: 95%程度

国立国会図書館については95%程度と素晴らしい的中率(第一回参照)を示していましたが,その他についてはどうなのか,というのが今回のポイント。

「市内の図書館の蔵書」については第四回の結果や鈴木氏の調査が参考になるかもしれません。「市内」といっても,大阪市や横浜市であれば30%どころではない,おそらく中央図書館単独でも相当の所蔵率でしょう。そういう意味では,上限値はもっと上になります(まあ,横浜市などは「県の主要図書館」といっても遜色ない規模ですが;)。
具体的な数字をみるとすれば,鈴木氏の調査が参考になります。品川区内最大の品川図書館で7割弱,地区の分館で10~28冊読めるらしい。fuzzyさんのいう「市内の図書館」の数字は後者の数字とかなり合致しています。23区や政令指定都市の図書館は平均からすれば上にいく規模だと思われますし,地方の図書館についての予想としては妥当なところかもしれませんね。
おそらくある程度の地域差があるでしょう。それについては今後確認していかないといけないかな。

「県の主要図書館の蔵書の合計」については,第三回の大阪府立と第四回の大阪市立の結果をあわせて見てみれば歴然です。あきらかに90% 近くの利用できる都道府県が存在します。ただし,合計でなく,「都道府県立図書館の蔵書」として区切れば,上限については適当な数字と言えるかも知れない。
では,さて下限は? ということで今回の調査です。


今回は2006年4月時点でもっとも蔵書数の少なかった以下の県立図書館3館を調査しました。


山梨県立図書館 約45万冊
高知県立図書館 約48万冊
奈良県立図書情報館 約48万冊


ほとんどの県立図書館は60万~80万の間に入りますので,この3館は特に蔵書数の少ない部類ということが言えます。蔵書規模にして都立や大阪府立の1/4以下のこの3館,さてどの程度の所蔵率がみられるのでしょうか?


例のごとく調査方法の確認。といっても前回と同じですが。

手法についての苦労話をすると,困ったことに山梨県立図書館,ISBN検索ができない。似たようなインターフェイスでもISBN検索のできるところはあるので,たぶんバージョンが違うのでしょうね。
仕方ないので,今回はタイトル検索も自動化させるようにISBNのリスト&スクリプトを修正。もともと横断検索システムの構築の予備テストとしてやってたので,タイトル検索もできるようにしてたのが功を奏した。まだいくつか不具合もありますが,ISBNのリストを投げて複数館の所蔵を一括で出せるようになってきております。
横断検索を実装させるときは書誌情報をXMLで取り出せるようにでもすっぺかね。思った以上に館ごとのインターフェイスに違いがない(まあ同じ会社の商品)ので,Ajaxな全国図書館横断検索とか(技術的には)意外にいけそう。
しかしこういう調査をするときは,ISBNのリストをまとめて投げて結果を返せるようにした方がいいかも。CSVでISBNのリストなげると,各図書の所蔵情報をRSSで返す,とかにしようかなー。

まあ閑話休題。


結果。

タイトルほか山梨県立奈良県立高知県立
『ギリシア棺の謎』エラリー・クイーン(創元推理文庫)×××
『エンディミオン』ダン・シモンズ(ハヤカワ文庫SF)
『ウロボロスの偽書』竹本健治(講談社文庫)×××
『双頭の悪魔』有栖川有栖(創元推理文庫)
『魍魎の匣』京極夏彦(講談社文庫)
『ぬかるんでから』佐藤哲也(文藝春秋)×
『クレープを二度食えば。』とり・みき(筑摩書房)×××
『誰彼』法月綸太郎(講談社文庫)×××
『夏と冬の奏鳴曲』麻耶雄嵩(講談社文庫)×××
『猶予の月』神林長平(ハヤカワ文庫JA)×××
『世界SF全集12』R・A・ハインライン(早川書房)×
『バブリング創世記』筒井康隆(徳間文庫)××
『(完本)黒衣伝説』朝松健(早川書房)×××
『パスカルの鼻は長かった』小峰元(講談社文庫)×
『時間衝突』バリントン・J・ベイリー(創元推理文庫)××
『三つの棺』J・D・カー(ハヤカワ・ミステリ文庫)×××
『エイリアン妖山記』菊地秀行(ソノラマ文庫)×××
『順列都市』グレッグ・イーガン×××
『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(ハヤカワ文庫SF)×××
『復活祭のためのレクイエム』新井千裕(講談社文庫)××
『精神現象学』G・W・F・ヘーゲル(平凡社ライブラリー)×
『伯母殺し』リチャード・ハル(ハヤカワ・ミステリ文庫)×××
『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』高橋昌一郎(講談社現代新書)××
『赤い館の秘密』A・A・ミルン(創元推理文庫)××
『十角館の殺人』綾辻行人(講談社文庫)×××
『ヴィーナスの命題』真木武志(角川書店)××
『五百光年』草上仁(単行本未収録) - 「S-Fマガジン」1998年2月号×××
『暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで』サイモン・シン(新潮社)×
「デュマレスト・サーガ」シリーズ E・C・タブ(創元推理文庫)×××
『名探偵の掟』東野圭吾(講談社文庫)×
『有限と微小のパン』森博嗣(講談社文庫)×××
『魔術の歴史』エリファス・レヴィ(人文書院)×
『オイディプス症候群』笠井潔(光文社)××
『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹(講談社文庫)
『ジョーカー』清涼院流水(講談社文庫)×××
『抱朴子』葛洪(岩波書店)×
『殺人喜劇の13人』芦辺拓(講談社文庫)×××
『世界魔法大全(英国篇)4』ダイアン・フォーチュン(国書刊行会)××
『妄想自然科学入門』菊川涼音(メディアワークス)×××
『鋼鉄都市』アイザック・アシモフ(ハヤカワ文庫SF)××
『法の書』アレイスター・クロウリー(国書刊行会)×××
『イーリアス』ホメーロス(平凡社ライブラリー) *呉訳
『真ク・リトル・リトル神話大系』H・P・ラヴクラフト(国書刊行会)××
『僧正殺人事件』ヴァン・ダイン(創元推理文庫)××
『衣装戸棚の女』ピーター・アントニイ(創元推理文庫)×××
『殺意』フランシス・アイルズ(創元推理文庫)×××
『トンデモ本の世界』と学会(宝島社文庫)×
『ガダラの豚』中島らも(集英社文庫)×
『悪霊の館』二階堂黎人(講談社文庫)××
『知性化戦争』ディヴィッド・ブリン(ハヤカワ文庫SF)×××
『タウ・ゼロ』ポール・アンダースン(創元SF文庫)×××
『月に呼ばれて海より如来る』夢枕獏(徳間文庫)×××
『イメージシンボル辞典』アト・ド・フリース(大修館書店)
『椿姫を見ませんか』森雅裕(講談社文庫)×
『呪われし者の書』チャールズ・フォート :The Book of the Damned×××
『トリフィド時代 食人植物の恐怖』ジョン・ウィンダム(創元SF文庫)×××
『盗まれた街』ジャック・フィニィ(ハヤカワ文庫SF)×××
『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀(早川書房)×
『暗闇の中で子供 The Childish Darkness』舞城王太郎(講談社ノベルス)×××
『失われた時を求めて』マルセル・プルースト(集英社文庫)
『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー(新潮文庫)
『吉里吉里人』井上ひさし(新潮文庫)
『火星にて大地を想う』T・フロゥイング×××
『吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学』平賀英一郎(中公新書)×
『エイリアン刑事』大原まり子(ソノラマ文庫)×××
『落ち着かぬ赤毛』E・S・ガードナー(ハヤカワ・ミステリ文庫)××
『ブラウン神父の童心』G・K・チェスタトン(創元推理文庫)×××
『昭和歌謡大全集』村上龍(幻冬舎文庫)
『地球の長い午後』ブライアン・W・オールディス(ハヤカワ文庫SF)×××
『リングワールド』ラリィ・ニーヴン(ハヤカワ文庫SF)××
『エンダーのゲーム』オースン・スコット・カード(ハヤカワ文庫SF)×××
『たったひとつの冴えたやり方』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(ハヤカワ文庫SF)×××
『奇想、天を動かす』島田荘司(光文社文庫)×××
『最上階の殺人 Shinjusha Mystery』アントニイ・バークリー(新樹社)×××
『夢の樹が接げたなら』森岡浩之(ハヤカワ文庫JA)××
『スターダスト・シティ』笹本祐一(ソノラマ文庫)×××
『陸橋殺人事件』ロナルド・A・ノックス(創元推理文庫)×××
『金なら返せん!』大川豊(幻冬舎アウトロー文庫)×××
『海を見る人』小林泰三(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)××
『ホッグ連続殺人』ウィリアム・L・デアンドリア(ハヤカワ・ミステリ文庫)×××
『思考する物語 SFの原理・歴史・主題』森下一仁(東京創元社)×
『ドグラ・マグラ』夢野久作(角川文庫)×
『たそがれに還る』光瀬龍(ハルキ文庫)××
『ダーコーヴァ年代記』M・Z・ブラッドリー(創元推理文庫)××0.1
『――――』――×××
『少年エスパー戦隊』豊田有恒(てのり文庫(国土社))
『ECCENTRICS』吉野朔実(小学館文庫)
『太陽の簒奪者』野尻抱介(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)××
『悪魔の系譜』J・B・ラッセル(青土社)××
『底抜け超大作』映画秘宝編集部編(洋泉社)×××
『猫たちの聖夜』アキフ・ピリンチ(ハヤカワ文庫NV)
『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター(ハヤカワ文庫SF)××
『サード・コンタクト』小林一夫(ソノラマノベルス)×××
『五番目のサリー』ダニエル・キイス(ダニエル・キイス文庫)
『赤と黒』スタンダール(新潮文庫)××
『百舌の叫ぶ夜』逢坂剛(集英社文庫)×
『星を継ぐもの』J・P・ホーガン(創元SF文庫)×××
『できるかなリターンズ』西原理恵子(角川文庫)×××
『海がきこえる』氷室冴子(徳間文庫)××
『――』―×××
所蔵率24.0%35.0%34.0%

いや,前回の大阪市なんかのを見てるとギャップがすごいすごい。
奈良県立と高知県立は約35%,山梨県立にいたっては3割いかんのですね。品川区立でいえば地区館レベル。
まあ「ひどい」とは言っちゃいけないのだと思います。規模に比例した結果なのでしょうね。また前回の結果をみてもわかるとおり,県立図書館は比較的一般書・専門書よりの収集をしているため,小説類はやや苦手。少ない蔵書数でのカバーする図書の優先度を考えれば,これは仕方ない結果なのかもしれない。というか多分,都立や大阪府立と比べること自体が間違ってる;

まあでもこの結果から「県の主要図書館の蔵書」の下限は24%まで下がることが判明しました。県内の市立図書館なども含めればもう少し上にいくのでしょうが,地方図書館では必ずしも県立図書館はあてにできない,ということなのでしょうね。

ランキングを更新すると,こんな感じ。

  1. 国立国会図書館 95.0%
  2. 大阪市立図書館 91.9%
  3. 横浜市立図書館 91.0%
  4. 名古屋市立図書館 85.8%
  5. 大阪府立図書館 76.8%
  6. 東京都立図書館 70.1%
  7. 埼玉県立図書館 65.7%
  8. 奈良県立図書情報館 35.0%
  9. 高知県立図書館 34.0%
  10. 山梨県立図書館 24.0%


いつもは複数館で「もってない本」をあげてましたが,今回は数が多すぎるので「もってた本」の方で。三館すべてが所蔵していた本は以下の12冊。

『双頭の悪魔』
『魍魎の匣』
『ダンス・ダンス・ダンス』
『イーリアス』
『イメージシンボル辞典』
『失われた時を求めて』
『カラマーゾフの兄弟』
『吉里吉里人』
『昭和歌謡大全集』
『少年エスパー戦隊』
『猫たちの聖夜』
『五番目のサリー』

新本格ミステリに現代文学,あとは有名どころの海外文学。『少年エスパー戦隊』はちょっと意外。『猫たちの聖夜』はなんか人気。翻訳SFが皆無なのはいっそ清々しい。
ちなみに三巨頭(『ECCENTRICS』『クレープを二度食えば。』『底抜け超大作』)は例によって一冊も所蔵されてません。

あと,いままではほぼ100%と所蔵されていたタイトルでも欠けてるのがいくつか。『ギリシア棺の謎』とか『ウロボロスの偽書』とか。逆によくこれ持ってるなあ,というのは高知県の『落ち着かぬ赤毛』ぐらいか。全体的に,他館でもってないような本はやはりあまり持っていない。傾向としてはやっぱり海外SF弱いですね。

タイトルでいうと,なんで高知県立に『海がきこえる』の続編だけあるのかが気になったり。『海がきこえる』は各市立でもってるのでいらない,って判断でしょうか?


これまで調べてきた図書館の結果とあまりに違うので戸惑うけれど,おそらくは県立図書館ではこういった館の方が多いのだと思います(山梨県立はさすがに極端ですが;)。都立や大阪府立が特殊なのであって,多くの館はやはり40~50%ぐらいに留まるんじゃないだろうか。ここまでやってしまうと,全県調査もしてみたいかもしれないなー。

なお,繰り返しますが,別にこの結果をもって各図書館がダメダメだ,という気はありません。県立図書館の役割,地方館ゆえの規模の問題,そうしたことを考えれば,こんな偏ったリストで図書館の蔵書の質が判断できるわけではありません。府立や都立の結果を見た上で言えば,蔵書規模に応じた結果が出た,というべきなのでしょう。


ちなみに,高知県は現在新県立図書館構想をあげているところ。県立館としての役割を考えれば駅前図書館というのが微妙というのはtohruさんのいうとおりなんですが,知事さんも図書館に好意的であるようだし,これからの成長に期待できるのではないでしょうか。

奈良県立図書情報館は今年で開館一周年。現在は,松岡正剛氏らの構築した画期的なインターフェイスをもつゼネティックコンピュータを館内に設置するという興味深い試みを進めてます(。また,これについてのトークセッションが先日行われた)。
こうした試みが利用者の利便性に役立つかはわかりませんが,いろいろと模索するのは悪いことではない,と思います。

山梨県立も含めて(ここは残念ながらネタ見当たらず;)今後がんばってもらいたいですね。10年後に似たような調査をしたら,また違う結果が出るかもしれません。


さて,次回はどうしよう。地域別とかが面白そうかなー。

投稿者 Myrmecoleon : 2006年11月05日 22:32

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myrmecoleonさんに頂いた版型の異なるものも含んだデータで再調査を行った ヒットしなかったデータについてもISBNが登録されていない書籍等がある... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年11月19日 16:01

コメント

山梨県も、県立図書館を新たな学習拠点として、
PFIで整備する構想を打ち出しています。
都道府県立図書館では岩手県に続いて、相当部分を
民間に委託するのではないかという話ですね。

http://www.pref.yamanashi.jp/barrier/html/kikaku/36869228322.html

投稿者 izuru : 2006年11月06日 01:05

フォローありがとうです;
やはりいろいろと対策を出してるのですね。

投稿者 myrmecoleon : 2006年11月06日 07:07

データTHXです。
とりあえず福島県内分を調査してみましたが、残りの5県分についても調査しますか?
秋田が全滅なのと、仙台市立図書館分が調査できないのが残念ですけど…

投稿者 natu_n : 2006年11月19日 16:07

>natu_nさん
あちらにも書きましたがご随意にー。
自分の方も道楽みたいなものですのでー。

投稿者 myrmecoleon : 2006年11月19日 18:29

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投稿者 cyijavexmf : 2007年07月02日 11:56

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投稿者 ytopawoqah : 2007年07月02日 11:56

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